落合恵子のクレヨンハウス日記(25年6月)

…… 6月。アジサイの瑞々しい葉陰。
せっせとアリがなにかを運んでいる。
あ、わたしがこぼしたビスケットのかけら。……

★雨の季節だ。ずっと前にも書いたけれど、毎年この季節になると、素敵な雨傘を買おうか、と迷う。それでもフード付きの雨がっぱを愛用していると、いますぐに傘を、という差し迫った気分にもなれず……。

 デパート雨具売り場。
 広いフロアに咲いた色とりどりの花のような傘を見ながら、もっと時間がある時に、と立ち去る。淡い水色もいいし、ベージュピンクもいい。思いっきり真紅もいいなど考えながら。
 そして気が付くと、時は真夏。雨傘のことなどわすれている。

 この梅雨もそうなるかな、と予想しながら、明日あたり、デパートの雨具売り場を少し歩いてみようか。

★この季節前後に、やっぱりこの絵本と思うのは、例の『あめがふるときちょうちょうはどこへ』(M・ゲアリック/文 L・ワイスガード/絵 岡部うた子/訳 金の星社/刊)。

タイトルがほんと、好きなんだ。青色を中心にして、ほかの色は抑えた絵も素敵だ。
ねえ、雨が降るとき、ちょうちょうはどこへ? 教えて。

★セダムが流行っている。ぷっくりとした葉がかわいい、色もいろいろ。かたちもいろいろ。わが家では、もう10年以上前に買ったセダムがいまでも次々に増えてくれている。
 吉祥寺の店の正面玄関。いろいろな緑や花たちを飾っているのだが、プランターの土が剥き出しはちょっと気になる。そこで「わたしの出番です」と登場してくれるのが、セダムたち。
 土の上に置いておくだけで、しっかり根を張って、増えてくれる。
「きみたち、すごいね、エライねえ」と時々声をかける。 

★4月18日のことだった。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を、新潟県議会は、なんと!否決した。

 理由は「二者択一では多様な意見を把握できない」だったり、「高度な専門知識を有する複雑なテーマで、県民投票にふさわしくない」等々。
 よく言うよ。県民の声を聞かずに、県会議員は一体誰の声を聞くというのか?民主主義への逆襲だ。攻撃か?
 署名が集まった14万3千人の思いは、こうして踏みにじられてしまうのか。

 県議会の構成は、自民党が過半数を占める。報道によると、自民の議員の中にも再稼働そのものには慎重な意見があるというが「党内野党」であった首相はどう思っているのか? 「党内野党」だった気概を見せてほしい。
 昨年、2024年の元日。石川県の能登を襲った震度7の地震。あの日、あの時、北陸電力志賀原発は稼働していなかった。が、もし稼働していたら? 想像しただけで身がすくむ……。

これはある新聞のコラムに書いたものに少しだけ加筆したものだが、いまでも悔しい。
こうして原発は次々に稼働していくのか!!! わたしたちは、愚弄されている。

★雨の日に読みたい絵本。なぜか、やしまたろうの『からすたろう』。どんな大人と巡り会ったかで、子どもの人生は大きく違う。

(クレヨンハウス「通信」25年6月号より)

『からすたろう』
やしまたろう/文・絵 偕成社/刊 
1,980 円(税込)