2024.12.11 04:58いま、わたしにある言葉 2024年12月「居場所について」小さな庭の片隅に置いた、古びたガーデンチェア。いつからそこに、居るのだね?その横にある、ホーローの水差し誰がそこに、置いたのかね?靴箱の左端に放置された若草色のスニーカーのヒモもう使われなくなったのかね?それぞれが それぞれの居場所に誰かに 確かに在る 12月。年の暮れあなたの居場所はたしかですか?あったかいですか?落合恵子
2024.11.11 03:21いま、わたしにある言葉 2024年11月「11月のことば」長すぎた夏が ようやく終わり、短かすぎた10月が終わる。そして、11月。詩人・長田 弘さんの詩画集『詩ふたつ』。・・春の日 あなたに会いにゆく あなたは、なくなった人である。 どこにもいない人である・・。学生時代からの恋人。彼の作品の誰よりも早い読者だったひと。あとがきで、詩人は記す。・・亡くなった人が 後に遺してゆくのは、 その人の生きられなかった時間であり その死者の生きられなかった時間を、 ここに在るじぶんがこうして生きているのだ・・。クリムトとの、この詩画集から朝毎に飛び立ち、ここに帰る日々が、わたしにもあった。ことばって、なんだと思う?けっしてことばにできない思いが、ここにあると指さすのが、ことばだ。落合恵子
2024.08.30 15:16いま、わたしにある言葉 2024年9月「九月のことば」生きている間に 読み切れない本は読んでしまった本の 何万倍生きている間に 出会えなかった人は会えた人の 何万倍生きている間に 生きている間に惜しいか 悔しいかいや 痛快ではないか!限界を知ることで 解き放たれることもペシミズムも 極めればオプティミズムに 転換中途半端に 絶望するな中途半端に 諦めるな中途半端に 夢見るな落合恵子
2024.08.01 05:22いま、わたしにある言葉 2024年8月「八月のことば」どこに居ても何をしていても帰っていける場のある人は つよい気づいた時が、はじめの時!旅の荷物は少ないほうがいい。確かに歩くために軽く歩きいい靴をはこう。時には裸足も。(『明るい覚悟 こんな時代に(文庫版)』朝日新聞出版/刊)クレヨンハウスの2Fでは、「帰っていける」本が並び、あなたに呼びかける。疲れたら、ここにおいでよと。落合恵子
2024.06.04 02:16いま、わたしにある言葉 2024年6月「はやまるな! きみ」人生の はじまったばかりの前半で悲しみや 無念さや 屈辱を味わうということはそれらと同じくらいかそれらより多くの喜びや充実があなたの中に 眠っているというあかしでもあるだろうだから、と結論づける気はないがもう少し生きてみないか。最初のよろこびのタネが春に遅れて芽吹く、その時まで。(『崖っぷちに立つあなたへ』岩波書店/刊)(東京店2階、大阪店2階の書店の一隅では、特集を開催中! 立ち読み、座り読み大歓迎!)落合恵子
2024.05.01 06:27いま、わたしにある言葉 2024年5月五月。いっせいに、いや、それぞれに萌える緑 緑 緑。五月。あの頃の自分にどこかで、ばったり会ったならいまのわたしはどんな言葉をかけるだろう。「いつも走っていたね。いつも荷物を抱えてその重さに息を切らせながら。もう少し ゆっくりでいいのだよ。立ち止まってもいいのだよ。また歩きだせばいいのだから」」あの頃の自分によく似たひとにあなたにそう声をかけてやりたい。落合恵子
2024.03.11 02:013.11を忘れない2011年3月11日。あの日、あの時、あなたは、どこで何をしていましたか?覚えていますか? あの瞬間と、それに続く日々を。そして、何をどう誓ったかを。そうして13年。思いだしてください。あの日のことを。......思いだすためには、一度忘れなくてはならない......と詠んだのは、詩人の寺山修司さんでした。わたしたちは忘れてしまったのでしょうか。最愛のひとを失った、あの人の苦しみを、悲しみを。いまもって悲嘆の中に埋ずくまる夜があることを。一瞬にして破壊され、押し流された近隣の懐しい風景、家々の姿。幼い日、息子がガラス戸に描いた、「とうさんの顔」。息子は「とうさんの年」になって、そして3月11日。あの日、風邪で寝込んでいた老いた父を助けようとして、息子は...
2024.03.08 12:153月8日、国際女性デイインターナショナル・ウィメンズデイ、国際女性デイを記念して、クレヨンハウスでは4月いっぱい特製ミモザケーキを焼きます。8日がその第一日目。デザインの関係もあって、テイクアウトはごめんなさい、店内で召し上がってください。国際女性デイを国連が制定したのは1975年。女性の社会進出や地位向上をまずは 目標とした記念日ですが、その翌年76年にクレヨンハウスは誕生しました。 18坪の小さな店でした。「女の敵は女」と言われた時代、女性が女性を支持しないでどうする! という思いで、「ミモザ賞」も作りました。手作りの賞状とミモザの花束だけを お持ち帰りいただいた、何もない賞です。「あなたのこと、尊敬しています。いつも見ています。励まされています……」そんな思いをこめた...
2023.11.08 06:19「あなたへ、わたしへ」 3.5パーセント!レバノン出身のフォトジャーナリスト、マリア・オーセイミが故国を訪れ、ひとりの少年に訊きます。「大人になったら、何になりたい?」少年は答えます。「大人になったら、子どもになりたい。なぜってボクには、子ども時代がなかったから」紛争や戦争は、再び「大人になったら子どもになりたい」そう願う子どもたちを大勢つくります。いま、この瞬間も。一方、大人になれずに、いのちを奪われた子どもは、どうすれば、自分の思いを伝えることができるのでしょう。どんなに言葉を尽くしても、いかに慟哭を重ねても、奪われたいのちは、かえってきません。壊された日常もまた。即刻の、まずは停戦を。そして、人質の解放を。わたしたち、非力な市民にも、必ずできることはある、と、わたしは信じる。ハーバード大...
2023.03.12 06:303月12日「忘れないために、どんな本をおすすめですか?」3・11が近づくと、そう聞かれます。個人的にも、またインタビュー等もあります。昨日、新聞に掲載されたのもそのひとつです。福島県大熊で農業されていた佐藤祐禎さんの歌集をどうしても読んでいただきたく、その他の本と一緒に2冊挙げました。最初に出会ったのが『青白き光』(いりの舎/刊)。農業と丁寧に向かう日々と、その日常に忍び寄る、原発への恐怖と憤りを記された一冊。原発で働く友人がまた亡くなった。病名がないまま、という内容の歌など、なんとも心に響きます。亡くなられた後にまとめられ、刊行されたのが、『再び還らず』(同じく、いりの舎)。一斉に黙祷はありさりながら再び還らずあまたの死者ら佐藤祐禎さんは避難先の福島いわき市で...